柳絮

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香水


ふっと香る。
「どうしたの?」
「ううん、なんでもない」
そのたびに振り返ってしまう。香りの主を探してしまう。
こんなところにいるはずがないのに。
例えば冬の間中つけていたマフラーから。
例えば戯れに抱きしめていたぬいぐるみから。
貴方の香りがするたびに、言いようのない愛しさと寂寥感が襲ってくる。
「この匂い好き」
「つける?」
もらった小瓶は、二度と開けることはない。
次に好きになるのは、香水をつけない男がいい。




言葉はいらない、ただ・・・


そっと腕を広げる。
そうすると君はちょっと困った顔をして、立ち上がってこちらへ歩いてくる。同じくらい広げた腕を脇の間に入れて、背中に回してくれる。ぎゅうっと背中にしがみつくと、君も腕の力を強める。ぎゅうぎゅう。薄い体の抱き心地は正直悪いけれど、くっついてるところからじんわりと温かくなって、ほうっと息が溢れた。不安が溶けて消えて、腕の力を抜く。
それでもまだぴったりとくっついたまま、体温と幸せを感じた。

8/31/2023, 12:00:23 PM