NoName

Open App

とある非日常

ふと目が覚めた。なにか夢を見ていた気がする。
まぁ、どうでもいいかと、時計の方に目をやる
午前3時…起きるにはまだ早い時間だ。
もう一度寝たいところだが、完全に覚醒してしまったようで目を閉じても寝られなかった。
どうしたもとかと思いながら、布団から起き上がり何となく甲板に出てみる。
そうすると、船をとしていたシャドウと目が合った。
「あれ?船長??寝てたんじゃないの?」
「少し目が覚めた。どこかに行くのか?」
「うん、散歩に行くところ!船長も一緒に来る?」
この時間船に船長がいないのもどうかと思ったが、まぁ仲間も弱くは無いから大丈夫だろうと思い
シャドウの誘いにのることにした。
「あぁ、いいだろう」
「やった!じゃあ早く行こ!」
そういい、彼女は俺の腕を引き、船から飛び降りる。
こうして、一緒に散歩するのはなんだか久しぶりで、少しワクワクしてる自分がいる。
彼女と手を繋ぎ、木々をぬけていくと、街に出た。
昼間ここに来た時は栄えている街らしく、人の声がうるさいほどに響いていたが、この時間にもなるとしん、と静まり返っている。当たり前のことなのだが、それにどこか違和感を感じた。
不安というか、わけの分からない感情が俺を襲った気がした。
その不安を無くそうと、彼女に話しかける。
「静かだな。」
「ん?うん、そうだね。この時間になると人は寝ちゃってるだろうし、自然に静かになるよねー。
本当あの賑やかさが嘘みたい。」
「あぁ、そうだな。」
彼女の声を聞いたことで少し安心した。
そのまま彼女に手を引かれ、街から、森へ入り、
抜けると、そこには満点の星空が広がっていた。
「よし!到着!昨日きれいな星空を見れるところを見つけてさ!折角ならって思って連れてきちゃった!」
綺麗な星空と、それを背に笑う彼女を見て、俺は柄にもなく見とれてしまった。
彼女は本当に綺麗だ。
腰まで伸びた漆黒の髪、引き込まれるような神秘的青い瞳、透白肌。
何処か人間感のない美しい彼女に目を奪われている。
「?どうしたの?そんなに私の事見て。
もしかして、見とれてた?」
ニヤッと意地悪そうに笑い、彼女は言う。
俺はそれに珍しく素直に答えてやることにした。
「あぁ、見とれてたよ。お前が思った以上に綺麗でな。」
「え…!」
すごく驚いたような表情の後に彼女は真っ赤になって顔を背けた。
…たまには正直に話すのも悪くないかもしれない。
いつもは気恥ずかしくて言えないが、今日はなんだか言わなければならない気がした。
彼女をこちらに振り向かせ、手を握り、深呼吸をしてから言った。
「俺はシャドウのことが好きだ。」
もう、彼女が吸血鬼であることなどどうでもよかった。
どんなに、世界から忌み嫌われる種族の生まれであろうと、俺は彼女を好きになった。
好きになったやつが偶然人間ではなかっただけだ。
「い、いいの?吸血鬼だよ?私…」
「そんなこと今更どうでもいい。俺はお前が好きだ。」
「…わ、私も!!私も船長のことが好き!」
いつもの済ましたような笑顔からは考えられないほど動揺し、耳まで赤くなっている。
良い返事を貰えたせいか、口元が少し緩んだ。
「あれ?船長わらってる?!」
「あ、いや…」
「あはは、笑顔下手だなぁ〜」
「おい。」
「あはは、ごめんね笑ありがとう。私を好きになってくれて。」
「あぁ、こちらこそ。」
お互い気恥ずかしく、少し沈黙が流れた。
そこで俺は前から思ってた提案をすることにした。
「…俺らは今から恋人だろう?」
「まぁ、そういうことになるよね…」
「じゃあ、1つ願いがある」
「…なに?」
「俺のことは名前で呼んで欲しい。
恋人で船長としか呼ばれないのはどこか寂しいからな。」
「…ふふ、あはは」
「何ださっきからよく笑って。」
「いや、意外と可愛いところあるんだなって思って。」
「…俺に可愛いなんて言うやつ初めてだぞ」
「だって外ズラに可愛いところはないもん。
どっちかと言うと怖さが勝つね笑」
「…で、俺の願いは聞いてくれるのか?」
「……うん…いいよ、ホーキンス」
照れくさそうに俺の名前を呼彼女。
思わず可愛いと思ってしまう。
彼女も人間と付き合うのは抵抗があっただろう。
それなのに俺の告白を受けてくれたのだ。
俺は責任をもって彼女とこれからを生きていかなければならないと自分に誓った。
夜も開け、朝焼けが見えてきた。
「…そろそろ帰るか、ほかの船員が心配する」
「そうだね!」
俺達は朝焼けを背に、船へ戻って行った。
その時、誰かの気配を感じた気がした…。

8/3/2023, 3:16:09 PM