【風景】
焼きついて離れないあの風景。
家が燃え、妹が泣き叫び、けたたましく鳴り響く消防車のサイレンの音。
消火後に家の中から連れ出されたのは母が焼け焦げて息絶えた姿。
母は私と妹と一緒に逃げる途中に柱の下敷きになってしまい動けなくなってしまった。
そんな母は最後まで笑顔だった。
「妹を連れて逃げなさい、あなたならできる。消防隊の人たちが来たら私も助かるから。先に行きなさい」そう言われ、その言葉を信じ妹を連れて外へ出た。
結果、母は死んだ。
なぜ、私はあの時母を助けなかったのか。
母が死んだのは私のせいだ。
見殺しにしてしまった、最愛の母を。
母の葬式の日、親族の人たちは誰1人私を責めなかった。
それどころか「よく妹を守った」「これから困ったことがあればいつでも頼っていい」と言ってくれた。
怖かった。優しくしてくれる人たちまでも私のせいで死んでしまうかもしれないと。
また、母のようになるかもしれないと。
消えることのない罪と絶望。恐怖とあの時母を助けなかった自分への憎しみ。
死ぬなら、あの日の母と同じように。
4/12/2025, 2:27:22 PM