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「君の奏でる音楽」

僕が思う音楽というもの、手、指先、腕、足、足先、体、顔、表情、瞬きや息遣いの身体のてっぺんから髪の毛一本に至るまで、全て、そして、こころを使って楽器を奏で、声をからだから出して、打ち込んで、命を吹き込んで、聴く人たちに、自分に、感情をいっぱいに込めて伝える。それが、僕にとっての音楽。
でも、僕にはそんな表現はできない。音楽は好きだ、だけど僕が音を奏でるには、障害が大きすぎるんだ。無理をしてやったことがあったんだ、大丈夫、大丈夫、って自分に暗示をかけて。楽しめるように、楽しみたかったんだけどね、怖くて怖くて仕方がなくて自分の目が膜で覆われて深い海に沈んでしまうから。無理だっだんだよ。僕にはきょうきだ。
そんな、そんな僕は、心地よい音を出す人に出会った。音をいっぱい出して楽しませる音楽じゃなくて、優しくて、高い音を使わなくて、そっと寄り添うような、そんな音に。
ふるえた。声が。体が。溢れてしまった。これまで積もってきたものが。
君が奏でる音一つ一つが繊細で、優しくて、楽しんでいて、まるで語りかけているような、安心する、音楽。

8/12/2023, 2:22:27 PM