ぬるま

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あの時断られて、私ほっとしたの。
良かった、君を道連れにしなくて良かった、って。
君みたいなすごい人を、死なせてしまわなくて良かった、って思った。

きっと、私は君の優しさを貪ってるの。
君が優しくするたびに私は変になる。
いつも皆にするみたいに出来ないの。愚痴だって涙だって止まんない。ほんとに怖くなる。こんなに弱いはずじゃないのに。私って、もっと、こう、ちゃんとしてるはずなのに。なんでこんなんなっちゃうんだろう。君のせいなのかな。私のせいなのかな。やだな。やだ、

あーもうやだやだ。
こんなこと考えてる私が嫌い。
止めて欲しい。
なんて駄目かな。
きっと駄目なんだろうね。

「…なんだ」
「ううん、ちょっと考えごとしてた」

君はリアリストだからそんなこと言ったって分からないだろうし、分からない方がいいよ。私だって分からないんだから。
もう君に会わない方がいいんじゃないかなって思ってもまた会いに来てる。私の言うことを断って欲しいし断って欲しくない。
君の隣は力が抜けるけど、私が私じゃなくなっていく。気持ちの悪いものが私の中でどんどんどん大きくなる。ソレが君の優しさをボリボリ噛み砕いて、君をバリバリ食べちゃう気がする。

「なんでもない」

ほんとに、なんでもないの。
思うだけならいいでしょ。
君はそんなに人に興味ないし、風がぬるいとすぐ理科の用語に結びつけるんだから。私の気持ちを知ったって共感できない。だから安心してるのに。君は人の気持ちでどうこうされない人だから。

でもさ、なんでかな。
このまま私が隣にいたら、君を殺しそうで怖いんだ。

だから、早く愛想を尽かして欲しい。やな女だ、って。付き合うのも馬鹿馬鹿しい、って。寝た振りして君が髪に触るのを待ってるなんて不毛だから。

「そうか」

なのになんで、そんな満更でもなさそうなの。
ね、怖いよ。

ほんとに私、嫌な女になっちゃう。
お願いだから、私を変にさせないでよ。

こんなことになるなら来るんじゃなかったってのと、君に会いたいの繰り返し。たぶんずっとこう。これが正解なのか分かんないけど、私じゃない私が大きくなってるからもうどうしようもできない。私の大嫌いな私を殺してしまいたい。
だからさ、はやく、首を振ってよ。
もう来るなって。
ほとほと愛想が尽きたって。
はやく。
取り返しがつかなくなる前に。
はやく。


2024 1/25(木) 7『安心と不安』

1/25/2024, 12:34:17 PM