なんとなく外を歩きたくなって
上着を羽織って家から出た。
午後9時。
近所をぶらっと散歩する。
自販機でコーヒーを買って河川敷まで来た。
僕はこの河川敷から見る月が好きだ。
今日も月を少し眺めたら帰ろうと
いつもの階段を登る。
登った先で目に入ったのは月ではなく、
月を見上げた女性の後ろ姿だった。
人が居ると思わなかったので
つい、「あっ」と声が出てしまった。
彼女もその声に驚いてこちらを見る。
なんだかその瞬間が可笑しくて
二人とも笑い出してしまった。
それがはじまりだった。
それからは約束するでもなく、
この河川敷に来てお互いがいれば
月を見ながら話をして、
また約束せずに別れた。
僕はいつしか月を見る事よりも
彼女に会う事が楽しみになっていた。
気が付くと彼女の事ばかり考えている。
彼女も僕の事考えているかなぁ、なんて。
夜になって、またあの河川敷へ。
僕は彼女の横に座って月を見上げる。
君に触れたら壊れてしまうのかな、この時間も。
君に伝えたらもう会えなくなってしまうかな。
僕はまだ約束できずに
月を見上げる彼女の横顔を見つめている。
-どうすればいいの?-
11/22/2022, 10:29:20 AM