NoName

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「ねえ、ママにはサンタさん来ないの?」

ビリビリに破けた包装紙で埋め尽くされた、6畳のワンルーム。
箱に入ったクレヨンを大事そうに抱えた娘が、突然首を傾げて問うてきた。

「ママはね、もう貰ってるから大丈夫なの。貴方が生まれてきてくれたこと。それが何よりも特別なプレゼントだから」
「……?そっか!」

娘はあまり理解していないようで、場違いなほどの明け透けな笑顔を咲かせた。私は頭を撫でてやった。

本当に無垢で、無知で、純真で、可愛い子。

きっと貴方は知らないのね。

包装紙の下に敷かれた催促状も。
パパが出ていった理由も。
この家のお薬の量が急激に増えたことも。
私が夜中に眠っている貴方の気道を塞ごうとした回数も。

知らなくて当然ね。
まだサンタクロースの正体すら知らないものね。

「見て見て!クリスマスツリー!」
「わあ、よく描けてるね。ここら辺に飾っちゃおうか」

どうか、知らないままでいてね。

12/23/2023, 3:12:27 PM