さとう

Open App

運動会なんて、同性が好きな僕にとっては一番嫌な行事だった。
借り物競争のお題が、好きな人だったりしたらと考えるとその日だけでも休みたくなる。
どの子を誘ってももしお題の紙が相手や他の子に見られたら僕はそこで人生終了。嫌いな子を逆に誘ったとて,きもいと揶揄われるだけ。好きな子を誘ってもきもいとかいじめの対象になるだけ。つまり誰を誘っても意味ないのだ。何故,こんな行事があるのだろうかと毎回思ってしまう。体育だけでいいだろう。オリンピック,パラリンピックに出たい人だけでいいだろうと。運動会も参加するかしないかの権利ぐらい僕たちにあったっていい。でもあったとしても大半が参加するだろうから休めないのだけど。一人だけ休むとか目立って嫌だ。こうやって考えてる合間にも運動会を休む口実をノートのまとめようとするが、風邪だとかの仮病しか思いつかない。仮病で休んだら弟がそれを言いふらすかもしれない。いっそ,家族全員にこの日旅行へ行かないかと提案してみようか。珍しいねの一言だけ言われて拒否られてしまうかな。弟が参加したがるだろうからきっと,今度でもいいとかなんとか言われるんだろうな。このような考えしか浮かばない時点で僕が運動会へ行くのはもう決まってしまっているも同然。あれ,でも運動会の種目って自分達で決めるんじゃなかったっけ。それとも借り物競走だけは全員参加なのだろうか。面倒くさくなってきた僕は,明日先生に聞き全員参加だと言われたらまたその時に考えればいいやと考えを放棄してしまった。これも僕の嫌な癖だ。自分の嫌な癖を書くのは永遠にできるかもしれない。そしてそれを瓶の入れ海に流すのもありだなとロマンチックな事を考えて自惚れようとした。そうすれば借り物競走で好きな人というお題が出た時にその人に手を引き一緒に走る事も告白する勇気も自信も少しつくと思った。
 「おーい,兄ちゃん飯だよ」
という弟の声が聞こえる。ふと時計に目を向けると19時過ぎだった。運動会についてこんなに考えてたんだなと驚きながら,弟に今行くと一言声かけた。
運動会の件はもう放っておこう。今更どうしようもない事だ。

2/7/2023, 1:02:26 PM