幽霊が苦手なあなたは夜に外出しない。
    でもあなたは
    我らが王、あの子の父親のことを弔ってくれるし、度々訪れては自分やあの子たちの体調を気遣ってくれたりする。
    「わふんっ!」
    王が鳴いた方に振り返る。
    「す…すみません…久し振りにお伺いに行こうと思ったんですけど…」
    「あら、お気になさらないで。嬉しいです」
    青く広がる煌びやかな海を眺める。
    「………………あの子は
    幸せだったんでしょうか……」
    あなたは一瞬驚いた顔をして、笑顔に戻る。
    それはやわらかく、愛しいものを見るような、優しげな表情だった。
    「…幸せですよ。
    王としてぼくたちを守って、人と関わって
    自分の子供も生まれて、しかも王になって
    だから、あの王は幸せだったでしょうよ。」
    気づけば零るる泪、それが海の一部になって、きらきらと輝いていた。
_2023.11.10「ススキ」
    なびく心。生命力。心が通じる。憂。悔いのない青春。
11/10/2023, 10:43:31 AM