りゃん

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「パパ見て!スゴイ。」
「本当だな。奈穂の顔より大きいな。」
と微笑む父を前にチョコレートパフェと格闘して
鼻の頭にチョコをつけながらも上機嫌に足をブラブラさせていた。
3歳の頃別れた父はたまにしか会えないチョコレートパフェをご馳走してくれるおじさんだった。
物心つく前なので寂しいとか悲しいとかの感情は無く本当にただの『チョコパフェおじさん』だった。
「奈穂はさ何色がすき?数字だと何番がすき?」
「うーんとね!オレンジと5」
「そうか、よしちょっとパフェ食べて待っててな。すぐ戻ってくるから」
そうやって何分経っただろうか?
6歳の女の子が顔より大きいチョコレートパフェを
食べきれず、ふと顔を上げると父が戻ってきて
「でかしたな!奈穂。万馬券だ!チョコレートパフェ食べ終わったら遊園地行こうな。」
「やったぁ遊園地!でももうお腹いっぱいでパフェ入らないよ。」
「じゃ遊園地行こうな。出ようか。」

というところで目が覚めた。
今考えると碌でもない父で母が借金が理由で別れたとしても仕方ないことだと思う。
私はもう27才になる。何だって今頃こんな夢見たんだか。でも朧気ながら茶目っ気のある優しい目をした眼鏡の似合うイケメンだったような気がしている。
「あーあ。潮時かな・・」
会社勤めして5年、父の面影に似た優しい目をした眼鏡の似合う部長とただならぬ仲になったのはやはりファザーコンプレックスなのだろうか?
仕事でのミスをフォローしてくれたことをきっかけに少しずつ好意を寄せるようになってそんなの良くないよなって思いながら食事行って凄い贅沢をさせて貰った。私が元彼と別れてドン底だったときに寄り添ってくれた彼。
パパの夢から醒める前にちゃんとお別れ言わないとな…
奈穂は新しく下したヒールを履いて家を出た。

『夢から醒める前に』

3/20/2023, 11:46:57 AM