「なぁ、楽園ってあると思う?」
「絶対ある!」
登校中の小学生がそんな話をしていた。
その話を聞いた俺はまず『楽園とは』という哲学を思い浮かべた。
この哲学を突き止めなければあるともないとも言えない。だがしかし、絶対あると言った小学生は『楽園』というものの定義なんか知らないだろう。
そこで俺は『楽園』を検索してみた。
すると『楽園とは苦しみがなく、楽しさに満ち溢れた場所。パラダイス。』と出てきた。
『苦しみがない。』この事でまず俺の生きているこの世界は楽園ではない事が分かる。
朝、会社に向かうのが苦しい。
会社で、上司に怒鳴られるのが苦しい。
夜、明日の事を考えるのが苦しい。
次に『楽しさに満ち溢れた場所。』というのもこの世界には当てはまらない。
朝起きて、会社に行って、夜遅くに帰ってきて、ご飯を食べて、寝る。
この生活のどこに楽しさを感じるのだ。
そこでふとスマホを見る。
ロック画面に表示された時間は8:10。
「あ〜やべ、会社遅刻だ。」と思ったが今日は会社に行かなくていい事を思い出す。
俺は今日ある場所に向かっていた。
険しい道のりを越えた先にある崖。
そこから見る景色は絶景らしい。
会社をサボって見る絶景はさらに美しいだろうと心を踊らせる。
俺が今から行く場所はまさに『楽園』だろう。
苦しみもなく、楽しさに満ち溢れた世界。
想像でしかないが確証はある。
だってその崖に行った人達は帰って来ないんだから。
帰って来ないって事は楽しいに決まっている。
苦しい場所だったらすぐに帰ってくるはずだ。
そんな事を考えていると崖が見えてきた。
何の変哲もない崖。
俺は崖っぷちに立ってみる。
あ〜確かに綺麗だ。
海が太陽の光でキラキラ輝いている。
でも、ここから落ちれば、、落ちる事ができたらこれ以上の絶景が見られるのだろう。
よし、落ちてみよう。
俺は手を広げ、目を瞑り風を感じる。
そのまま一歩を踏み出す。
「あ〜やっとだ、疲れた。」
5/1/2024, 8:44:45 AM