NoName

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<金を貸させてくれ

                    おう久しぶり〜
                    急にどした?>
    
                 貸してじゃなく??>

<金を貸させてくれ

                  そういわれてもな>

                ていうか会えなくない?
                 地元にいないよね?>
   
                     いまどこ?>

<塾
 
                     地名で頼む>

<マレーシア
       
                      遠いなー>
                  
                 あったよね同窓会に  
                  行けないみたいな>

                シンガポールかそれは>

<金を貸させてくれ

                     戻ってきた>

             てかいくら貸してくれるの?>

<96208円
       
                      半端だな>

                  そっちのお金換算 
                だとキリがいいとか?>

<お釣りを支払ってくれ 

                       えーと>

                そっちが100000円渡して、
                こっちが3792円支払う>

                  ってこと?よね?>

<計算し直してくれ

                  え、間違ってる?>
            
                 合ってるじゃねーか>

<96208円貸させてくれ

            いやでも外国にいるんでしょ?>
  
                   無理じゃない?>

           あーでも電子マネーでとかあるか>

<お釣りを支払ってくれ

              そっかお釣りが欲しいのか>

           電子マネーだったら直接96208円
            送ればいいもんな      >

               …なんでそれじゃダメ?>
            
<金を貸させて、お釣りを支払ってくれ

             マレーシアに来いってこと?>

<来ないでくれ

               そっちが日本に来るの?>

<来させないでくれ
  
                  じゃあどうすんの>

<考えさせないでくれ

                 なんなんだよお前!>

               こっちばっか考えさせて>

            こっちはお釣りの計算とか
            電子マネーの案とか出したのに>
 
           そっちは塾行ってるだけじゃん!>

         計算くらいやれよ塾行ってんだから!>

            こっちだって暇じゃないんだよ!
            バイトだけど働いてるんだよ!>
         
                服の専門学校行きたくて
                弁当屋で学費貯めてて>

              全然仕事慣れなくて
             今結構しんどいんだよ正直!>

            今日
                
              お前の言ってること意味不明
              だし、てか学生時代もそんな
              親しくなかったよね?
              もう付き合ってられないよ>
 
                日付変わっちゃったし>

                 朝早いんだよ弁当屋>

                    もう疲れた…>

<空を

<空を見てくれ





 ベランダに出てみると、こんな田舎でも久しく見ていない満点の星空が広がっていた。遠く離れたマレーシアにいるクラスメイトも私と同じ空を眺めているのかな、と思うとなんとなく心が暖かくなったり、同じ空とはいうけど国内ならともかく実際には日本とマレーシアは1時間程度の時差があって、その場合その表現は適切なのか、まあでも時差が14時間あるアメリカ(フロリダ)と比べたらマレーシアなんて隣にいるようなものかと思ったり、何にせよ全ての人々が同じ空の下にいる事実につながりを感じて心強くなった。
 そして私は、星空に向かって3792円を放り投げた。そうしなければならないと思った。するとひゅうと風が吹いて3000円をさらい(小銭は落ちた)、すぐに遠く夜の闇に消えていった。
 次の日の朝、ポストを覗くと97000円が入っていた。それは率直に怖かったが、学費の足しにしようと前向きに考えることにした。そう、前を向こう。未来はきっと待っている。今日の空気は少し冷たくて、空は青く広がっている。私は一人じゃない、心でそう唱えた。そして自転車を漕ぎ出して、私の一日が始まった。







<頑張ってくれ



7/12/2023, 4:09:22 AM