『ハッピーエンド』
暖かい陽の光が、体を包む3月下旬。
太陽の照りつける昼時。
久々に取れた休み。会いに行かなければ。
新たな生活へ胸を踊らせた人々のあいだを走り抜ける。
羨ましい、そんな嫉妬心を心に蔓延らせながら。
そんな街を抜け、ある家の扉を叩く。
「いらっしゃい」
ヘラり、と微笑んで私を迎え入れてくれた。
口は笑っているけれど、少し開いた目には何も写してなんていない、ドロドロとした瞳。
夜遊びが好きで、素行もあまり良くなくて。
でも本当は、とてつもなく優しくて、心の弱い、先輩。
私の、初恋の人。
ふら、と近づくと、何も言わずに抱きしめてくれた。
「おつかれ、頑張ったね。」
頭を撫でる手が、私の心を浄化する。
少し震える私の体を、黙って包み込んでくれていた。
「今日はね、美味しいご飯作ったんだよ。
だから、早く食べよう?」
少し落ち着いた頃を見計らって、そう声がかけられる。
軽く頷いて、離れる。
ふと、長い袖の隙間から赤い線が見えた。
ずっと会えていなかったから?
いや、自信過剰にも程があるか。
今は、二人の時間を楽しもう。
夜。晩御飯の後。
お風呂に入っている隙を見計らって、
薬をいくつか取り出し流し込む。規定量よりも多く。
ふわふわとする。生死をさまよう感覚。
心臓が早く脈打っていく。
あぁ、生きている。私は、今、生きている。
扉の開く音が、聞こえた。
「……また、何も言わずにやったの?」
「……あ、ごめん、なさ」
「せめて、言ってからにしてよ……」
「ごめんなさい、嫌、嫌わないで」
縋りつくように、足を掴む。
「……いいよ」
優越感と劣情に塗れた瞳を細めて笑う。
少し見えた机のコップの水は、いつの間にか無くなっていた
───それじゃあ、今日もスる?
耳元で、そう囁かれる。
頷く前には、首筋を舌が這っていた。
あぁ、今日も夜に溶けていく。
寝静まった夜。丑三つ時。
「……愛してるよ。死んでもいいと思えるほど、ね。」
深い眠りについた額に柔い口付けを落とす。
……だから否定しないで、受け止めて、ね?
暗く溶けた夜に微睡んでいく。
二人堕ちる。目覚めぬ夢の中。
そう、これは、私たちのハッピーエンド
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文才を……文才を恵んでください……
そういえば、無事第一志望に受かりました!
間開けてしまってごめんなさい!
これからはもう少し更新していきたいと思います……!
このあとも読書をお楽しみください!
では!
3/30/2024, 5:25:44 AM