一ノ瀬

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…ねえ。

 ん?どーした。

今から家行ってもいい?

 …なんかあったのか。雨だし迎えに行くよ。

実はもう家の前まで来てる。


部屋の窓から外を見ると本当にあいつがいた。
傘もささずにひとりで。

急いで玄関を開けに行った。


急にごめんね。来ちゃった。

 大丈夫だ、気にすんな。とりあえず入れよ。風邪ひくから先にシャワー浴びて。

…うん。ありがとう。


そう言ってぎこちなく笑う君。
瞳の奥の悲しさがみえみえだ。



服まで借りちゃってごめん。ありがとう。


シャワーから上がってきた君。
どうしてそんな淋しそうな顔をするんだ。
どうしようもない気持ちになって、抱きしめてしまった。


 何があったかわからないけどさ、僕のところに来てくれてありがとう。

…ッごめんごめんね。泣きたいわけじゃないんだけど。

 思う存分泣いていいからね。
 

しばらくして泣き疲れたのか君は眠ってしまった。
君はいつも急だよな。
そして、いつも詳しいことは話してはくれない。
でも、それでいいんだ。
君が話したいと思う時まで僕は待つよ。


ー突然の君の訪問

8/29/2024, 9:25:57 AM