テーマ:夢と現実 #22
※この物語は#20からの続編です
ラックは家に帰ってからも彼女のことを考えた。
今日、市場で助けてもらったあの子だ。
「セピア、凄かったな」
僕はベッドに寝転び隣りにいるセピアに話しかける。
「ライト王女。すごく怒っていましたね…」
「違う! そうじゃなくて!!」
僕は母上の話をするセピアに首をふる。
「そうじゃなくて! 市場にあったあの人だよ!」
セピアは何も言わなかった。
「セピア?」
僕は返事がないセピアに問いかける。
「ラック、今日のことは誰にも言っちゃだめだ。僕たち二人の秘密」
セピアがそういった。
「は、? なんで?」
僕は苛立ちを覚えた。
「ラック、怒らないで聞いてほしい。
…この国では、魔法使いは悪魔だと言われているんだ」
僕の眉がピクリと動く。そんなの知らない。
「悪魔である魔法使いは、地下の牢獄に閉じ込められているらしい。そして魔法は、この国の敵に利用されている」
「な、何だそれ」
僕はそう言って、起き上がる。
「これ見て」
そう言われて出されたのは、分厚い本と報道紙の切り抜きだった。
どれも魔法使いを記事にしているのだが、酷い書かれ方をしている。まるで魔法使いは『悪役』のようだ。
「この国は酷く、魔法使いを嫌っている。おんなじ人間なのにな」
セピアは、ため息をついた。
「でも、物語ではよく魔法使いは正義のヒーローの味方側にいるじゃないか!」
僕はそう言って声を荒げる。
「少し前までは魔法使いだって正義の味方だったさ。でも、変わった」
「なんで?」
「わからない」
セピアは頭がいい。僕よりもずっと知識を持っている。
そんなセピアでもわからないなんて……。
「夢と現実は違うんだ。ラック」
「でも、僕はあの人のことかっけーって思う」
セピアは
「はぁ?」
珍しく反抗的な声を上げる。
「僕はこの謎を解いてみせる! 魔法使いとこの国の謎を!」
僕がビシッと人差し指を立て、セピアに宣言する。
「全く、ラックは……」
そう言いながらも口元が緩んでいるセピア。
「ラックは止めても止まらないから、僕も付き合うよ」
そう言うと呆れたように…いや、少し楽しそうに微笑む。
「じゃあ、決まりだな。夢と現実を繋げるために!
魔法使いの未来のために!」
※お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、日付をまたいだ自分だけのリレー小説を書くことにしました。
まだ、#20を読んでいない方はそちらから読んでいただきたいと思います。
初めての試みで下手になってしまうかもしれませんが暖かく見てもらえると幸いです。
では。狼星
12/4/2022, 12:53:44 PM