変カフ身

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高田くんが新しい自転車を買った。

今乗っている自転車は来週には粗大ごみになるらしい。
最後になにか面白いことは出来ないか?という話をしながら河川敷を歩く。

どちらからともなく、土手から自転車を滑走させるという話に落ち着いた。

土手はかなりの急斜面で、その先には田舎の、開けた道路がある。見渡しがとても良く人の気配はないので事故の心配は無い。

高田くんは自転車のハンドルから手を離し、
無人の自転車が猛スピードで斜面を走り出す。

土手と道路の間にある側溝に、衝突と呼べる勢いで到達した瞬間、自転車は斜め前方へ高く舞い上がった。
くるくるニ回転し着地...するかと思ったが反動でまたきれいにバックフリップを一回転。

今度こそ着地し、よろよろと道路を数メートル前進し、推進力のない自転車は横倒れした。

呆然とし、会話もなくしばらくの間動けなくなった高田くんと私。

両タイヤともパンクした自転車を押して帰った高田くんも、私も、それ以降宙を舞った自転車の話は特にしなかった。

こんな嘘みたいな話誰も本当だと思わないし、当事者すら嘘か幻だったんじゃないか? と今でも思っている。

信じてもらえたとしてもつまらない話ではある。

つまらないことでも、あの自転車の供養として文字に起こしてみた。

もうすぐお盆ですね。

8/4/2024, 11:58:13 AM