「逆光」で思い出すのは、何もかもに疲れ切っていたあの頃・・・
実家に帰る度に、まだ小さかった甥っ子を誘って、よく海岸へ行ったあの頃の、ある日の事。
小さな港で、天気がいい日は釣り人達が糸を垂れている。
あんなふうにのんびり釣りをするのもいいな、と、最近釣りというものが気にかかる。
遠くの波の上に時折跳ね上がる黒っぽい生き物は、イルカだと聞いて驚いた。
ここの海でイルカが見られるなんて、昔は聞いた事が無かった。
子供の頃はよく遊んだ浜辺だが、少し入れば急に深くなっているここの海は遊泳禁止で、海遊びには適さないし、昔から色々事故も多い。
暖かくて風も無い穏やかな昼下がり、癒しを求めてボンヤリと、寄せては返す波を眺めつつ小さな港を見渡せば、釣り人達もマッタリと竿の前で寛ぎ、魚を狙っているのか、カモメもチョロチョロうろついている。
ふと振り返ると、逆行で真っ黒なシルエットの甥っ子が、私がいる波打ち際よりも少し高くなっている所から、こちらを向いて立っていた。
黒一色のそのシルエットの背後からは、後光のように太陽光が差していて、何だか神々しささえ感じるその姿に一瞬、目が醒めるような驚きを覚えた事を、今も覚えている。
あまりにもくっきりと黒一色で、表情などまるで分からない影絵のようなその姿に、敢えて逆光で何が撮ってみたい、そんな気にさせられた、数年前の「逆光」体験。
別に意味など無かったのだろうけど、何となくメッセージ性を感じ、今も色濃く記憶に残っている。
「逆光」
1/24/2023, 7:13:53 PM