形の無いもの
彼は静かな人でした。
滅多に笑わないし、怒らない。
私は彼の影を求めていました。
彼は静かな人でした。
虫を見ても、猫を見ても、
眉をぴくりとも動かしませんでした。
彼は静かな人でした。
初めて笑ったあの日は
きっと忘れてしまうでしょう。
彼と出会って10年目。
それはとても静かな冬の夜で
私の泣き声だけが、
響き渡っていたのでした。
彼は静かな人です。
花を見ても、煙を見ても
私の前には、
彼は静かな人でした。
その沈黙を、愛と形容するのでした。
9/25/2024, 9:41:30 AM