Seaside cafe with cloudy sky

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【窓越しに見えるのは】

なんてことだ!本当に吸血鬼がいるなんて!
僕は今、廃墟となった深夜の古城の一室に立て籠もって孤独に震えている。なぜかって?細かい経緯をはぶいて説明すると、僕の長所でもあり残念な短所でもある、活火山のように勢い激しい好奇心に衝き動かされたことと、短所でしかない類まれな不幸きわまるめぐり合わせが積み重なった結果によって、この古城に住みついている吸血鬼と宿命的な邂逅を果たしてしまったからだ。あの血の気の失せた不気味な肌の色、時代がかった耽美な衣装、獰猛で常人離れした怪力……まぎれもなく人外のモンスターだった。あんな魔物からここまで逃げおおせられたのは奇跡としか言いようがない。這々の体で今ひそんでいる隠し部屋を偶然さぐり当てて、こうして震えながらひたすら朝がくるのを待っているってわけ。なんてったって吸血鬼の弱点の一つは太陽の光だからね。夜が明ければあいつはイヤでも僕の捕獲を諦め、大嫌いな光から逃れるために、大人しくねぐらへ帰るしかないはず。無謀に戦うより籠城戦で逃げ切るほうが生還できる確率は高い!このかくれんぼゲームは僕の勝ちで終わらせてやるんだ!さあ、あとどれくらいだ?腕時計を見て時間を確認すると、ようやく午前の1時台……長丁場の根くらべになるな。アラームを3時間後ぐらいに設定して、少し眠って時を稼ごう……今はまだ、鉄格子のついた小さな窓から漏れてくるのは淡い月の光だけれど、目覚めたとき真っ先に目にするのは、夜明けのまぶしく神々しい「日差し」でありますように ―― それじゃ、おやすみなさい。僕の幸運を祈っててね ――

7/1/2024, 1:12:45 PM