汚水 藻野

Open App

「もう、こんな関係、終わりにしよう」

そう告げた彼。私は呆然としていた。

「…こんな中途半端な関係は、もう終わりにする。
ボクは記憶を無くした、それは揺るがない事実だ。"ボク"はキミと恋人同士だったようだね。
最初は、記憶を無くしたボクに、キミが、恋人同士だ、って必死に言ってくるもんだから、信じたよ。でもボクにキミと笑い合った記憶はなかった。

"ボク"はキミのことを好きだったんだろ。だから好きになろうとした。努力したんだ。

………


だから、終わりにしよう。この関係を。」

涙が流れ出そうなのをこらえて、彼をしっかり見つめる。


「ボクは見事にキミを好きになった。記憶のあったボクも、無いボクも、絶対キミを好きになっていたよ。


ボクと付き合ってほしい。


…だめかな。」


「もちろんに決まってるわよ…っ」


私はこらえきれなかった涙を流しながら、彼に抱きついた。

_2023.7.14「終わりにしよう」

7/15/2023, 10:56:44 AM