狼星

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テーマ:とりとめのない話 #35

※この物語は#20からの続編です

凍える寒さが来た今日。
ミデルに本当のことを話そうと決めた。
最初はとりとめのない話から始まった会話。そして、さり気なく僕の過去の話もした。
ミデルは、頷きながら聞いてくれた。
そして本題。僕は話すときやはり止めようかと何度も思った。でも、ミデルが僕の話をじっと聞いてくれるのを見て思った。
あぁ…大丈夫だって。
根拠もないそんな僕の思い。でも、約1年一緒にいて思ったのは、彼女は信頼できるということだった。
「ミデル。僕の秘密を教える」
僕は声のトーンを変えた。ミデルはさっきまで丸くしていた背筋を伸ばし僕の方を見た。
「僕は……この国の王の息子。つまり、この国の王子なんだ」
ギュッと目をつぶった。怖かった。ミデルの顔を見ることはできなかった。やっぱり心の何処かでは怖いと思っていたのは確かなことで、ミデルがどんな表情でこれを聞いているのか怖かった。

少しの間、沈黙が続いた。沈黙の時間はほんの少しだったかもしれないが、僕にとっては長い時間だった。
「知ってたよ」
沈黙の時を止めたのはミデルだった。
「知ってた。ラクラがこの国の王子、ラック・クラームだってこと」
ミデルは淡々と言った。
「信じてたよ。自分から言ってくれること」
ミデルの言葉にホッとしている自分がいた。知っていたのにも関わらず知らないふりして自分と一緒にいてくれたことに。
「ラクラ?」
ミデルは僕の顔を見て、驚いたような声で名前を呼ぶ。
「どうして泣いているの?」
僕の視界はいつの間にかぼやけていた。
「な、泣いてない」
僕は恥ずかしくなって顔を隠す。
「いや、泣いてた!」
ミデルは、僕の顔を見ようと覗き込んでくる。僕がそれを頑張って避けているとクククッと言う声が聞こえてきた。
「まぁ、泣くことは悪いことじゃないさ」
そう言って、笑ったミデル。
「だから、泣いてないって」
そう言いながらも鼻をズビッと音を立ててすする。
カッコ悪い。そう思いながら涙を拭う。
よかった。僕は安堵した。そして少し怖くなった。
打ち明けたということは、確信を持てなかったかもしれない僕の正体を確信してしまったのだから。
「なぁ、ミデル。王子だとわかったとしても、僕と一緒にいてくれるかい?」
問題はそこだった。ここで頷いてもらえなかったら、僕はどうすればいいのだろう。一気に不安が僕を襲う。
「もちろんだよ。ラクラがラック王子だろうと、ラックはラックだもん」
ミデルは出会ったときと同じような笑みを浮かべた。
良かった、本当に。
「じゃあ、私のことも聞いてもらおうかな。泣き虫さんに」
「泣き虫じゃない!!」
僕はそう言いながらも笑っていた。
そしてまた、とりとめのない話を2人で話す。そんな日常が僕にとっての幸せだった。


♡400ありがとうございます。これからも狼星をよろしくお願いいたします。

12/17/2022, 2:19:58 PM