霜九狼

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「見ろ!まだくそあっちぃけどもう秋を見つけたんだ!」
彼が、窓を開け放して籠り切った空気を入れ替えていく。
蒸し暑い、けれど微かに秋の訪れを感じるような不思議な風と匂いを感じた。
ああ、もうそんな季節なのか。外に出られない僕はふと思う。
まだまだ暑さが続いてて大変だとか、それでもいろんなお店で秋の味覚が出回り始めたとか、ツクツクボウシやアキアカネが飛んでいたとか、汗に濡れながらもとても嬉しそうに語る。
いつも平坦な僕の日常に唐突に現れては、季節の移り変わりと共に色々なことを嬉しそうに教えてくれる君の笑顔はとても眩しい。
語るだけ語ったらまたすぐに出て行ってしまいそうな君を留めたくて、僕は毎回同じ言葉を返す。
「そうなんだ。ぜひ詳しく聞きたいから、窓じゃなくて玄関から来てくれないかい?その間にお茶とお菓子を用意するから」

#突然の君の訪問 -ちなみにここは三階の部屋-

8/28/2024, 3:07:32 PM