099【飛べない翼】2022.11.11
飛べない翼って、そりゃあ、風切羽を切られた翼だろ?
たしか「シートン動物記」で、つかまえた野生のガンの風切羽を切って、飛べないようにして飼育した話があったはずだ。結局、羽根の生えかわりにあわせて新しい風切が生えてきて、それを失念していた主人公が、うっかり大空に羽ばたかせてしまった、というストーリーだった。ただただ、野生すげー、人間がいくら小賢しく羽根を切っても、飛ぶ力は再生するんだ、と感動したのを覚えている。
「大造じいさんとガン」を読んだのは、「シートン動物記」よりも後だった。野生の再生力を甘くみていた「シートン動物記」の主人公とちがい、果てしない知恵比べの末に捕獲したガンの残雪を野に返す決断を、みずから下した大造じいさんの姿に、この物語、シートンに勝ったな、とおもった。おもったどころか、ほくそ笑んでたな。あらためて国語の教科書で再会したとき、そりゃ、載るだろう、だって魂の高貴さが違うからね、大造じいさんはガンが人間より下位の生物だなんてあなどったことは、一回もないもんね、と私が内心でこっそり自慢してたっけ。
ということで、私の対自然の倫理観の基盤のかなりの部分は、いまだに大造じいさんの高貴な魂がになってる。絶対に、教科書から消さないでくれ、とこの場をかりて訴える。
11/11/2022, 2:00:09 PM