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 眠りにつく前に、買っておいた夢を枕の装置にセットした。夢を売り買いできるなんて良い時代になったもんだ。夢の世界で私は何にでもなれる。なりたい自分になる夢を買えばよいのだ。
 ある日夢の中で、夢を買うことができることに気がついた。夢の中で夢を買えば現実に帰らなくても済む。
 私は今日も眠りにつく前に新しい夢をセットする。そして起きる夢を見る。もはや、ここが夢なのかどうかは分からない。私は幸せで、ここが現実かどうか議論する意味はないのだ。私は朝起きる夢を見て、眠りにつく前に明日の夢を用意する。これは私の終わらない夢の物語だ。

11/2/2023, 12:41:51 PM