「これをお前さんに。」
そう言って、神様は僕に一本のろうそくをくれた。
そっと火を灯し、僕の両手に握らせる。
瞳で跳ねるその小さな灯りは、僕の心を照らす温かさらしい。
「これから先、幾度となくこの灯りが消えかけることがあるだろう。されど、これだけは覚えていてほしい。」
「容赦ない雨風からその灯りを包み込み、お前さんを照らしてくれる〝灯り〟に出逢う日がきっと来る。」
神様はふっと目を細め、優しく頷いた。
あの日からどれだけの月日が経っただろうか。
社会に出てからというもの、僕の心は大嵐に見舞われることが殆どなような気がする。
神様……まだですかね? と尋ねたい自分の心では今日も、小さな灯りが静かに揺れているのであった。
〝心の灯火〟
9/2/2023, 11:57:58 AM