鏡面に疲れた自分を映してる 耳を塞いで目を閉じている
「鏡」
隣の席で妙齢の女性同士が話してる。
持て余した炭酸ドリンクをどうしたものかと見つめつつ、
ついつい聞き耳を立ててしまう。
隣の彼女は、真っ直ぐに背筋を伸ばして、美しい所作でケーキを口に運びつつ、スッパリと言い放つ。
「やっぱ、ほうれい線にだけはヒアルロン酸入れるわ」
「やっぱりやるん?」
「年齢には勝てんわ」
そんな会話が続き、ポツリと一言
「自分の事を、好きでいたいやん」
と、言葉を続ける。
こんなに透き通るような佇まいの彼女でも、鏡の前では落ち込んだり、あれこれと自分に注文をつけたりするのだろうか。
カガミウツシというのは、存外ありのままを映してはくれないようだ。
「鏡」
8/18/2024, 10:13:27 AM