『織姫と彦星』テーマ:七夕
一年に一度しか会えない織姫と彦星の話。
くだらない。私にはなんの関係もない話。だけど毎年私の気持ちを憂鬱にさせる。だって、誰も私の誕生日だってことを認知してくれないから。そう、思っていたけれど。あなたは違った。
私の彦星はどこにもいない、なんてくだらない冗談を言ったら、僕を君の彦星にしてくれないか? なんてクサイセリフで返してきた。そんなことを言ってきた人は初めてだった。
最初は少し気持ち悪いと思った。でもその気持ちは本当だったみたいで、あなたはいつも私に真剣に向き合ってくれた。だからほだされたのかな。でも確かに愛されている実感があなたのことを信じさせてくれた。
私たちは晴れて恋人になった。それから結婚もした。でも幸せなのはそこまでだった。
あなたが死んだのは私の誕生日だった。ケーキを買った帰り道の事故だった。
誕生日であり命日である、という事実が私に重くのしかかった。けれど考え方を変えた。私たちは同じ日に生まれ、同じ日に死んだのだから、一年に一度会えているのではないか?
それから私は織姫になった。
7/7/2023, 5:02:57 PM