風信子

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かつて
射るような眼光を放っていた
その鋭い眼差しは 今


落ちゆく枯葉の
行方を追い

地に溶けゆく
雪の粒を眺め

高い空で弧を描く
鳥を見つめている




掴んだ夢と
手放した愛

握りしめ続けてきた
譲れない思い

そして

夜明けを信じ過ごした
いくつもの闇の日々を

彼の肉体に深く刻まれた
無数の皺が物語る




おぼつかない足でも
歩みを停めず

前だけを見つめ
彼は歩いてきた

そして

これからも歩く


ふと蘇る
遠い昔抱いていた
夢や憧れ

そして

悔いや諦めをのせた歌を
声なき声で口ずさみながら





熱くなる瞼の裏で
彼は想う


戦ったっていい
休んだっていい


何もせずに
息だけをして

誰かの手を借りて
生きていたっていい




人生には
正しいも間違いも
無いのだと


ジャッジは
己の中の
神がくだすのだと


答えは

作り出して
いくものなのだと





「鋭い眼差し」

10/16/2023, 8:58:16 AM