胸が高鳴る
多分俺が死んでも、誰も気づかないし、変わらない。
だから人生は気が楽で、堪らなく虚しい。
毎日毎日、朝早くから学校に通う。
学校行って、学んで、たまに部活して、家に帰る。
勿論、学校にも家にも一定の会話は有るが、その会話さえも最近ではワンパターンになりつつあった。
『年は取りたくないものですね』
授業終わりの他の生徒の散っていった、抜け殻みたいな教室、
口から漏れ出した言葉を、呆れた様子の担任が拾い上げる
『何言ってんだよまだ若いのに、これからだろ?
だいたいなぁ俺がお前くらいのときは…………』
また始まった、この下りさえももう聞き飽きた。
担任は俺を元気づけたり、喝を入れることが目的でなのではない。
ただ自分語りがしたいだけだ。
いつだかにそうだと悟ってからは、
その手の話になると顔に笑顔を貼り付け、相手を持ち上げることに徹するようにしている。
担任と生徒の二人しか居ない教室で、
教師からの有り難い話は右から左に流す。
それが、一番誰も気分悪くはなら無い。
とても安全で、合理的な選択。
今日も今日とていつもの決まり文句で話に区切りがつく
『お前にもいつか良い出会いがあるって』
……良い出会い
それが恋愛的な運命の出会いを指すのか、
はたまた心を通い合わせる親友を指すのか
定かでは無い……だが、そんな出会いがあるなら是非とも体験してみたいものだ。
今の俺の人生には、刺激が足りない。
橙色に染まる窓を見て、
『先生この後の会議があるから、君も早く帰るんだぞ』
と言い残し急ぎ足で教室を後にした
そうして誰も居なくなった教室は、毎日使っているのに新鮮な空気を漂わせていた。
"お前にもいつか良い出会いがあるって"
その綺麗事を、頭の中で反芻する
実際に恋も、親友も、出来たときにはどれ程世界が変わるだろうか。
俺の世界は丸ごとひっくり返ってしまうのではないか。
世界が丸ごとひっくり返ってしまえば、今までの俺が無かったことになるみたいで、少し怖いけど
世界がひっくり返るくらいな事でもないと、一生俺の人生に刺激は訪れない。
考えただけで、胸が高鳴る
俺の人生を変えてくれる"誰か"。
その"誰か"との出会いを期待して、明日も明後日も無意味な日々に身を投じる。
3/19/2026, 7:38:33 PM