でこポン

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「夜の海」

打ち上げ花火のあとだった。

もう見ていた人のほとんどは帰ったのに、私達だけは海岸に残っていた。みんな部活に塾にと忙しく、今日のような日は特別だったので、充実した時間をまだ終わらせたくなかったのだ。
そうはいっても、することもなかったのでただその場に佇んで雑談をしているだけだったが、それでも満足だった。

もう花火の見えない海を眺めていた。
ザー、ザザー...。単調でない波の音は生きているようにも思えた。灯台の光が数秒おきにこちらを照らす。
水は 深い青に 染まっている...浅瀬では街の灯りをみなもが反射してぼんやり輝いていた。

これだけ落ち着いた空間でも、変わらず時間は過ぎる。私達の内に秘めた感情をガソリンに加速して、まるで矢のような速さに思えた。時間は終わる。明日からまたそれぞれの毎日に戻っていく私達。それはまるでメトロノームのようで、少しずつずれていく。再度テンポが揃う日がくるなら、そのときもこの七里ヶ浜で同じ花火を見ていたい。

8/15/2023, 1:23:21 PM