『別れ際に』
(暗いです。死ネタあり。救いなし。)
ずっと、大好きだった。
ずっと昔から。今までずっと。
あの日、あの場所で出会ったあの日から。
人生にかけがえのない人になったんだよ、君は。
この間だって、そう。
いつもみたいに笑いあって。
「また、明日ね。」
そう言って別れたのに。
明日は、来なかったみたいだ。
黒い服に身を包む。
君の葬式は、あっという間に過ぎていって。
もうすぐ、火葬されるらしい。
君の顔が見れるのも、これが最後。
きっと大泣きしてしまうと思っていたのに、涙は出なかった。
少しだけ、君の顔に手を添える。
冷えきった肌は、この世から君がいなくなったことを確かに伝えていた。
火葬が終わり、骨を詰め、葬儀が終わる。
何も実感のわかない葬式だった。
とぼとぼと歩き、1人帰路につく。
君がいなくなっても、世界は何も変わらなくて。
それが、とてつもなく、悔しくて、悲しかった。
少しだけ変わったのは、世界の色が灰色一色になったことと、息をするのが少し苦しくなったことだろうか。
家の扉を開ける。扉をしめる。
いつも聞こえるあの声はもうない。
小さく息を吐く。
なんだか、くるしい。拳を握りしめる。
「...っうあああああ!!!」
なんで、なんで。
心が張り裂けそうな程に痛い。
息もできないくらいに苦しくて仕方がない。
膝から力が抜け、その場に蹲る。
なんで、言ってくれなかったの。
生きるのが辛いんだって、苦しいんだって。
なんで、なんで!!
手に血が滲む。それでも構わず床を殴りつづけた。
僕には、何も出来なかったの...?
こうかいしても、もうおそい。
いきが、できない。
視界が暗転した。
足が痛い。
なんでここで...そうか。
息が苦しくてそのまま気絶したのか。
すこし落ち着いた頭で考える。
このまま生きていて、何か得られるものはあるのだろうか。
楽しいことは?君がいないのに?
このままでは幸せになっても罪悪感しか生まれないだろう。
暗い部屋に、足を踏み入れる。
確か、どこかに縄が...
押し入れを開けると、麻縄があった。
天井に括り付け、椅子に登る。
椅子を、蹴った。
また、もし会えるなら。
来世では君と、生涯添い遂げたいな、なんて。
この世との、別れ際。
見えたのは、君の笑顔だった。
9/28/2023, 10:56:18 AM