クジラになりたいイルカ

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きっと明日も_____

小説日記 2022/10/01




「クジラは勉強してるでしょ?」

その親友の言葉に毎回カチンとくる。一日に必ずこの言葉を言われる。特にテスト前には。受験生だからしょうがないのかもしれない。でも、どうしてもムカムカしてしまう。




「してないってばー!」

本当のことなのに、私はよく嘘をついてるかのように言ってしまう。自覚しているのだけれど、焦るとどうしても言葉がうまく出てこない。出てきたところでバカみたいな言い訳をしているだけで相手には何も響かない。だから、シンプルに「していない」と伝える。それでも、疑われるのはなぜだろうか。




「いや、裏ではしてそう」

裏も表もなにもまず私は彼女みたいに努力する気持ちがない。やったところで報われるかどうかもわからないことをそんなに必死にやりたくない。でも、それはみんな一緒で報われるとかそういうのわかった上で努力をする。だけど私には難しいよ。




「さっきの私のワーク見たでしょ?」

さっき、彼女は私の机の上に置いてあるワークを勝手に取り「一緒に勉強しよ!」っといつものように自分の机へ運ぶ。私も彼女の席に向かう。勉強と言っても彼女はただ私のワークをみて『コイツよりはましだな』と優越感に浸っている。別にそれはいい。私がやっていないのが悪いからだ。でも、私のワークやノートをずっと見といて彼女のワークを見ようとするとさり気なく取られてしまう。こんなことでムカっとする私は幼稚だろうか。




「それに、私の昨日のスクリーンタイム8時間だしさー!まじやばいよねw」

彼女は毎日塾に行って頑張っている。知っている。わかっている。でも、その約3時間が目覚ましの時間で、その約4時間が癒やしボイスや音楽。そんなの彼女は知ったこっちゃない。時間は時間。無駄にしたのに変わりはない。だけど、hspという体質のせいにしてしまいたい自分がどこかにいるんだ。しょうがないと。そう言ってしまいたい自分がいる。




「え、絶対嘘」

嘘だったら、いいのにね。朝1時間半かけていて起きることも、学校が終わると疲れてベットに飛び込んでしまうことも。夜、自分の過去や自分の過ちを思い出して、偽善者のように泣くことも。何も見たくなくて眼鏡をつけないことも。何も聞きたくなくてイヤホンをつけることも。全部全部ぜーんぶ嘘だったらいいのに。そう何度思ったことか。






「ホントだってー!!」

「じゃあ、ラインで送ってね?」


脳内で真っ白い背景に文字が浮かぶ。




①送る
・「え、やば」と言われ「しょうがないじゃん!」と怒ってしまいたくなる自分が出てきてしまう。
・彼女の励みになるというメリットもある。

②送らない
・きっと明日になったら忘れているし、言ったことろで話をぶり返してしまう。
・家で彼女のことを考える必要がない。
・信用度が低くなる可能性がある。




信用度は元々ないと思うし家では一人でいたい。だから私は②の方を選ぶことにした。





本当は彼女に、ムカついてるんじゃない。

毎日毎日頑張っているのは彼女なのに、『頑張れないのはしょうがない』と言い訳してしまいたい自分にムカついて仕方がないんだ。





____自分を恨む。



9/30/2022, 5:05:31 PM