まだ見ぬ景色
瞳を閉じればそこは
静寂の森
木漏れ日は私を優しく包みこむ
煌めきと永遠の時は
ショパンのピアノ曲のよう
エゴという鎖は
ホワイトキューブの中にあった
千曲川の決壊後
真実に近づいた時
あなたがそばにいたと知った時
くるみ割り人形は
ホワイトキューブを雪に変え
鎖を粉々に砕いた
鎖の破片は
私の額の周りに集まって浮かび
ゆっくりと光へ変化していく
雨も無いのに
涙も流していないのに
心の中に虹がかかった
すると
一瞬にして
柔らかで穏やかな
森羅万象というマフラーに
包まれる
優しいマフラーをして
再び静寂の森へ辿り着く
煌めきと永遠の時は
見えなかった透明な扉だった
扉を両手で開くと
マフラーは虹色の蛇へと変化し
一緒に美しき草原へと駆け出した
何とも言えぬ幸福感が
あとからあとから溢れ出し
微笑みが止まらない
この世界には愛しかない
全てはバランスを保ち
全ては愛され
ありがとう、と呟いた
遠くに見える湖は
水鳥達の楽園
柔らかな水飛沫をあげ
ダイアモンドのような輝き
雲一つない青空へ
心ごと舞い上がる
嬉しさのあまり寝転んで
瞳を閉じればそこは都会
アスファルトを歩いた日々
スクランブル交差点の
雑踏の音と煙草の匂い
記憶を彩る
都会の何処かで誰かと出会い
格差と競争と戦争と
電磁波と添加物と農薬とプラスチック
欠乏と不安と心配と
流されながら
押しつぶされながら
涙と眠った過去
それらの闇は全て
祈りという光のそばにあった
まだ見ぬ景色
それは
記憶の奥の奥にあった
憧れながら
憧れながら
時に涙を流しながら
いつも諦めていた
それでも何処かで諦めたくなかった
信じていた
信じることを諦めないで…
世界から愛されたいのなら
愛を纏った曲を聴けばいい
ゲーテやトルストイや手塚を
読めばいい
森羅万象の愛に包まれたいのなら
この世の全てを愛せばいい
まだ見ぬ景色は
心の奥に
もう既にある
1/13/2025, 2:15:41 PM