【時を告げる】
「アンタは生きろ」
目の前の仏頂面の男が言う。お前は刺客だろ?俺は裏社会の人間を殺っちまったんだ。
「あの組織はろくでもない。アンタは騙されて借金を負わされた被害者。殺した事実はあるが天秤に掛けるなら殺られたあのゴミよりアンタの方が価値がある。だから、生きろ」
面は厳ついのに優しいな、と思った。俺は一礼してその場を去った。
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「面白い話をしましょう。三日前のターゲット。今日、ここから20㎞も離れた場所で見つかったんですって。どの話か分からない?借金取りの新米を殺めた40代の男性。貴方に排除を頼んだ方ですよ。報告書によればこの事務所から5㎞程度の場所で亡くなっている筈なんですが…。動く死体って存在したんですね」
相棒が眼鏡を拭きながら心底面白そうに語る。アイツ…逃げきれなかったのか。俺は拳を握った。
「どうかされました?私はファニーでオカルティックな話をしただけですよ。ウフフフ」
俺は何も言わない。仏頂面を貫く。相棒は眼鏡を掛けると微笑んだ。
「さて、今日もお仕事をしましょうか。いつも通り頼りにしていますからね。沢山、救済しましょう」
死を救済だと思っている相棒。バレているのならばもう既に消されててもおかしくない。だが、コイツは俺に抱き付いていつも通りに俺を愛でてくる。俺は動揺を隠して胸元にある相棒の頭を撫でた。少女にしか見えない相棒は嬉しそうに頬を胸に擦り付けるだけだった。
9/6/2024, 11:14:17 AM