アパー・キャットワンチャイ

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ラストスパート―――。
これまでの全力を超えて、超えて、走る。
まだか、ゴールはまだか。
限界と身体は告げる。
もう、限界。むり、むり。
紅潮した気持ちで、引っ張る。それでも無理やり走らせる。
ゴール。ゴールラインを踏んだ瞬間、身体が脱力する。速い呼吸が止まらない。ふらふらと、皆が並ぶ列へと座りに行く。小さい折り紙くらいの紙に書かれた12位の文字。前に座る1桁の人達は、一息つけて余裕が戻ってきたのかお喋りなんかをしている始末だ。
ハァハァと酸素を求めながら、うつむく。
君とはもう、話せないぐらい引き離されてしまった。運動バツグンの、ドッチボールでいつも壁になって守ってくれた君。仲良さそうに、前の方でお喋りしている君に、黒いドロドロしたものを煮やす。
次の昼休みで、おめでとう。また上位じゃんと話しかけてくれたことに私は嬉しい気持ちとともに自身の感情を恥じる。君なんて、4位じゃないか。前回は、9位だったのに2桁になったことを、微塵も感じさせない純粋な祝福に、眩しくて思わず目をそらす。君はそんなことなんか意識してないのかもしれないけど、やっぱり君みたいな明るい元気な人と接すると、私の暗い部分が浮き出てくるようで、一緒にいる資格がないように感じてしまう。
「今日もドッジボール来るよな」
思わず「うん!」と返事をして、走り出す。やっぱり距離が開いてしまうけど、少しペースを落としてくれるような配慮を感じる。
もしかしたら、このまま男女の身体の能力の違いで、距離は開き続けてしまうかもしれないけど、いつも近いところにいたいと願うのは、私のわがままだろうか。

12/2/2023, 6:01:55 AM