理想のあなた
鏡に映ったわたしが、好きで嫌い。女性という肉体はいとおしいし、造形もたしかによろしくはないが、とはいえ人さまにご迷惑かけるようなものではきっとない。
でも、女の子ってめんどくさい。学生時代はメイクを禁止されるくせにやらないと笑われるし、センスがなくても不器用でもすべてやらなきゃいけない、らしい。そう思うと女性というこの肉体がとたんに嫌なものになる。鼻にティッシュ突っ込んだ風邪引きすっぴん面皰たくさんのわたしを愛せよ。ダイエットだとか、適当なこと言わないで。
わたしの理想の人がいる。幼馴染。完璧ではないけれど、たしかにわたしの心を射抜いて、鷲掴みにして離さない。天才であり秀才で、賢さだけではなく、努力や無理に裏打ちされた能力が好きだった。うらやましさもあった。ざっくばらんに結ばれたポニーテールも、目の下にうすらに溜まったクマも、小学生からずっと使っているであろうリュックサックも好きだった。わたしは憧れるくせに努力をしなかったので、今はほぼ話す機会も少ない。それでも捻出して相手してくれるのだけが、わたしのしあわせだった。
せめて、高校卒業するまではお友達でいようと思う。きっと彼女はわたしを幼馴染とも腐れ縁とも思ってないだろう。嫌われるなら、もう二度と会わないような、そんな時に嫌われたい。耐えられそうには、ないけれど。
5/20/2024, 1:04:41 PM