「もう一人の私」
少女は心臓に重い病気を患っていました。
ドナーを探していますが、なかなか見つかりません。
少女の家族、友達、親戚、恋人…
そして、少女を応援する知らない人達は、
少女が可哀想だと思い、
励ましや暖かい言葉をかけていました。
少女の天国行きのリミットが刻一刻と迫る時、
遂にドナーが現れました。
早速、手術が始まり、
少女の心臓は元気な物に取り替えられました。
術後の少女の容態は安定し、手術は無事に成功しました。
少女は退院し、周りの人達は祝福しました。
その時、周りの人の声に混じって、
「君、幸せ者だね」
と、知らない人の声が少女の耳に聞こえました。
少女はその時は気にも止めませんでした。
退院して一ヶ月程経ったある日、
少女は学校から帰ると、
おやつにプリンが用意されていました。
少女は嬉しそうにプリンを口に入れると、
突然、胸が苦しくなりました。
少女は苦しそうに咳き込み、
プリンを食べるのを止めました。
その時、「苦しめてあげる」と言う声が
聞こえて来ました。
通院日、特に異常はありませんでした。
数週間後、公園で友達が
「アバターゲームやろうよ」
と、誘って来たので、
友達の元へ早歩きで向おうとすると、
突然、胸が凄く苦しくなりました。
少女は苦しそうに胸を押さえて
その場でしゃがみ込んでしまいました。
「大丈夫?!」
と、友達は心配しました。
その時、「あの世に行けば良いのに」と言う声が
聞こえて来ました。
少女は、謎の声の事を友達に言うと、
「頭おかしいんじゃない?」と、言われ、
友達は少女から離れて行きました。
その夜、少女は悲しくなって
恋人にメッセージで謎の声の事を書いて送ると、
「ゴメン、分かんないや」
と、返信が来て、
それ以来、彼から連絡が来なくなりました。
少女は自分の部屋で涙を流していると、
「アハハ、面白いや!」
と、謎の声は言いました。少女は、
「何で、私を苦しめるの?」と、言うと、
謎の声は、
「君の幸せな人生見てるだけってつまんない。
僕は死んだから、好き放題遊んでるんだよ」
と、長い話を始めました。
「僕は、君の今の心臓だよ。
僕は、父親が居なくて母親だけで育ったんだけど、
毎日毎日、何かと理由を付けて怒って来るんだ。
その度に何発も殴られて、とても嫌な思いしたよ。
クラスメートは皆冷たいし、
僕だって友達が欲しいくらいだよ。
君は良いよね。周りの人達みーんな優しいからさ。
本当に君を苦しめたくなるよ…」
少女は、「お願い、頭の中で話さないで」
と、謎の声に言いましたが、
「じゃあ、長い話を続けるよ」
と、謎の声は聞く耳持たずで長い話を続けました。
少女は、両親に謎の声の事を相談しましたが、
両親は「頭の病気じゃないか?」と言い、
少女を精神病院に入院させました。
「アハハ、面白いや!精神病院って刑務所みたいだね!」
「ヒドイ…何でこんな事するの?」
「コレで君は精神病患者。誰もが君の事を見下すよ。
もう友達も出来ないし、結婚すら出来ない。
君はずーっと一人だよ。
あと、変な事したら、苦しくて痛い思いするからね」
少女は薄暗い病室の中、
謎の声と話すしかありませんでした。
少女の入院生活が10年続いたある日、
少女は一人に限界を感じ、
天国に向かいました。
12/11/2021, 11:30:35 AM