#26 抱えていた秘密。
一年前のあの日は、自分の命の長さを知った日だった。
余命。まさか、自分にそんな言葉が降りかかるとは。
絶望、その2文字だけ頭の中を埋め尽くした。
でも、その気持ちを乗り越えて、残りの人生を明るく楽しもうと決意した。それから、身体が弱っていくのを感じてはいたが、挫けることはなく楽しく過ごせていた。
そんなある日に、初めて発作が起きているところを見られたのだ。今まで、タイミングが悪いときに発作が起きることもなくて、救われていたのに。
そして、見られたのは…クラスメイトの"彼"。
落ち着いている雰囲気で、優しい人だった。そのイメージ通り、見られた時はすごく心配されたけど、必死に大丈夫、だと言い張り逃げてしまった。
見られてしまったという気持ちと、助けてくれる人がいたという気持ちが混ざり合い、複雑な感情が生まれた。
せっかく、自分の気持ちも押さえて、誰にも迷惑をかけず、秘密にしておこうと思っていたのに。
心のどこかでは、すごく嬉しかったけど、本当に幸せになることはもう、諦めていたのに……。
"彼"のせいで素直に楽しみたくて、仕方がなくなったじゃん。
この先も、本当の気持ちを出して、幸せになりたくなった…。
もう、誰も悲しませないように、
自分は幸せにならないって決めたのに………。
複雑な感情にも、慣れなくて不思議な大粒の涙を流した。
___哀愁をそそる
11/4/2022, 10:28:59 AM