「生まれ変わりの川」
一人の幽霊は天国の光景を見ていました。
その幽霊は、生き物だった頃は一つも良い事が無くて、何かに生まれ変わるのにうんざりしていました。生まれ変わる度に災難に遭っていたからです。
「もう、生まれ変わるのは嫌だ。良い事なんて一つも無いよ」
「行くでしゅ」
幽霊の目の前に、赤ん坊みたいな妖精が現れました。
「生まれ変わって、愛情たっぷりの人生を送るでしゅ」
「ゴメン、他当たってくれない?僕はどの人生も嫌なんだ」
幽霊は、赤ん坊みたいな妖精の誘いを断りました。
「ダメでしゅよ?ほら、さっさと行くでしゅ。ほら、早く行きましょ」
赤ん坊みたいな妖精が生まれ変わりの川に連れて行こうとしました。
「嫌だ!どの人生もゴメンだ!戦争か拷問か処刑の最期の人生なんてもう嫌なんだ!」
「そんな事無いでしゅよ?ホラ…」
赤ん坊みたいな妖精は、怪しい光を放ち始めました。
「赤ん坊に戻そうとしてるんだな」
幽霊は瞬時に悟りました。赤ん坊みたいな妖精は幽霊をグイグイ引っ張って行きました。
「待って。その人嫌がってるよ」
別の幽霊は赤ん坊みたいな妖精を止めました。
「無理に転生させる必要は無いんじゃない?」
「イジメは駄目だよ」
赤ん坊みたいな妖精の周りに幽霊達が集まって来ました。
「ど、どうしたでしゅか?!えーん!」
赤ん坊みたい妖精は泣いてしまいました。すると、怪しい光は強くなりました。
「オイ、妖精。生まれ変わりたいんなら、お前一人で転生すれば良いだろ」
幽霊達に混ざってその場に居た鬼は、赤ん坊みたいな妖精をひょいっと掴んで生まれ変わりの川に放り投げました。
「あっぷあっぷ…何しゅるんでしゅか!覚えてろでしゅ…」
赤ん坊みたいな妖精はそのまま流されて行きました。
「鬼さん、皆さん、ありがとな」
幽霊は、鬼や幽霊達にお礼を言いました。
「いやいや、戦場で助けてもらったお返しですよ」
「一緒に戦った戦友じゃないか!」
鬼や幽霊達は、人間だった頃の姿に戻って天国の光景を見ながら思い出話に浸りました。
12/28/2021, 11:20:04 AM