木彫りの髪質

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お題:誰かのためになるならば (長文)

誰かのためになるならば、私は喜んで人に尽くそう。

私は昔から、物事にやる意味がないとやる価値がないと思う人間だった。これをやれば家族が喜ぶ。これをやったら自分の能力が上がる。これをやれば...と、そんなことを考えて人生を生きていたら、いつの間にか周りから"自分勝手な女"と思われるようになってしまった。そのせいで私は仕事場で浮いている。上司からは罵詈雑言、後輩からは陰口、苦い顔。でも私は自分の考えていることは正しいと、いつもそう思って日々を過ごした。

しかし、そんな私を変える出来事が起きた。私の家で友人と食事をしたときのことだ。私は会ってすぐ、友人に溜まりにたまった愚痴を吐き出していったのだ。うん、うんという相づちと一緒に私の気分がどんどん晴れていくのを感じる。
全て話終わって、スッキリした頃だった。外は少し曇っていて、雨でも降りそうな、そんなとき「だったら、全て人間のためにやってると思えばいい、そうしたら、意味が生まれる。」
私は口を半開きにして友人を見つめた。
は?
正直意味がわからなかった。友人がこんなことを言ったのは初めてで、つい混乱した。そんなときも目の前の曇りひとつない瞳はずっと私を見つめて
「ねえ、昔は家族のためになることをしたことはないの?」
...あ、そういえば、そうだ。昔は家族が喜ぶ顔が見たくて、色々頑張ったな。
「心当たりありそうだね。...関係性は違っても、それは身近な人だよ。喜んでくれるなら、それで良くないかな」
なにかを言いたくても、脳が追い付かなかった。そのあと、友人は一言、"もう帰るね"といって、ドアの閉まる音が聞こえた。でも記憶は断片的にしか思い出せない。
その日の夜は、土砂降りの雨を眺めながめて過ごした記憶がある。

それからの友人は人が変わったように、私に色々と物申して来るようになった。ついには昔は嫌いだった、とも言われてショックを受けた。
人を喜ばせると、意味がある。本当だろうか?
毎日悩んで悩んだ末に、明日からでもそう思ってやってみようかな、と、自分の決意が揺らいだ。
それをやることに、もしかしたら意味が生まれるかもしれないから。
...多分、明日は晴れるだろう。

7/26/2023, 12:02:41 PM