絢辻 夕陽

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梅雨の季節が過ぎ七夕様の時期に入った。
私はこの季節になると思い出す事がある。

その年の七夕の朝は曇っていた。
天気予報によると夜には天の川が見える天気になる様だった。
それだけでもなんか嬉しかった。
毎年この日になるとよく土砂降りや曇天で見えない事が多いからだ。

「今日はちゃんと見えるといいね。」

彼にそっと言った。

「そうだね。毎年こうなればいいんだけどなぁ。」



急に土砂降りが降り出した。

「天気予報じゃ曇りのままのはずなのに」
「まぁ、夜にはちゃんと晴れて天の川が多分見れるよ」
「多分て何よ。多分て。」
「いや、天気予報もたまには外れるじゃないか。
今はたまたま外れているだけなんじゃないかな。
雨雲レーザー見る限りこの後ちゃんと晴れるみたいだし。」
「もう。」

彼はいつもこんな調子だ。
言い方はある悪いが行き当たりばったりと言うか、何というか。かなり大雑把な性格だ。

対する私はというと

「ま、晴れる事を願うか。」

もはや半分諦めている。
いや、今土砂降るという事は夕方から晴れるという事かもしれない。

という様に合理的かつ、さっぱりとした考え方をする人間だ。

今年こそは、今年こそはなんとしてでも。

いや、天の川がちゃんと見られたら。

と、何かに対して心の中で意気込んでいた。


「今年こそ、最後なんだから告白してみせる。」

私は思わず小さな声で出てしまった。

「えっ?今なんか言った?」
「あっ、いや、何でもない何でもない。何も言ってないから。」
「そっか。」

危ない危ない。ばれるところだった。

夕方

あの土砂降りは何処へやら、晴天になり夕日もキラキラ輝いて落ちていく。

「もう夕方か。早いなぁ。」
「でも無事晴れてきたし虹も見れたし。今日は満天の星空で天の川が見れるかもね。」

夕陽はキラキラと輝きながら地平線の下へ潜り込もうとしていた。



想像を絶する満天の星空だった。
天の川もしっかりと見えるし、織姫星と彦星もきらきらと輝いている。
これほど綺麗な星空を公園で見上げたのは久々の事だろう。

「綺麗。」
「なんか、思ってた以上に凄いな、天の川って。」

私は今の発言で言おうとしていた事を思い出した。

「ねぇ、私達友達になってどれくらいだっけ。」
「んー。多分三年くらいかな?」
「そろそろさ、いい加減付き合わない?」
「えっ?それ今言う事?」
「いいじゃない、こうして一緒に天の川見てるんだし。」
「うーん。まぁ、いいよ。かれこれ数年は付き合っているわけだし。腐れ縁かもしれないけどさ。」

一言多いぞ。

「そっか、ありがとう。」

私はそれから彼と付き合って数年後別れた。
彼は仕事の都合上遠い街に転勤になったからだ。
別れてしまったけれど今でも友達として付き合っている。
遠い街の綺麗な星空を写真に収めて時々送ってくれる。

私はそんな彼の事が本当は今でも大好きだ。

「七夕の恋」

6/28/2024, 12:13:22 PM