あの日は確か雪が降っていたと思う。
雨だったかもしれない。
雪か雨かは思い出せないのに
傘がさせないと思った事は覚えている。
両手に持たされた写真。
訳も分からず任された大役。
兄の後ろをゆっくり歩く。
足を滑らせないように踏みしめて歩いたから
きっと雪だった。
兄と二人で乗り込んだ見知らぬ車。
突然響いた大きな音
モノクロの世界に響いた父の声
遠ざかる父の、あの5文字がいつまでも消えない。
いつまでも、私の中に。
『ありがとう』
2/14/2025, 2:09:40 PM