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終わらせないで

秒針が進み、夜景を作っていた光は消え、私たちの街は眠りにつこうとしていました。
返していないメールが溜まっています。学校に行かなくなってから半月ほど経ったでしょうか。
私は、幼なじみの麻里の家に来ていました。親から電話が来たときも、教授からレポート提出の督促メールが来たときも、知人からのLINEが来たときも、ずっとこの家で生活していました。
あのとき、麻里が電話をしてくれなかったら。私はここにはいませんでした。あのとき、麻里を泣かせた男がいなかったら。私は麻里の家を知りませんでした。
麻里は私の顔を見た途端抱きつき、はっきりと「死にたい」と言いました。私は麻里のことを尊重したかったから、それに応えました。
友だちとしての責務を果たしたあと、急に人恋しくなってしまったので、麻里の手をずっと握っていました。麻里はまだ温かくて、このまま残しておきたいなと思ったので、麻里の手を冷蔵庫に入れました。
次の日は大丈夫だったのに、だんだん崩れてきたそれを見て、このままじゃいなくなってしまうと思ったので、1番下のところを切って、切って、切ってを繰り返しました。
なぜだか電気がつかなくなってしまって、麻里は変な色になってしまいました。とても悲しくて、涙が止まりませんでした。
爪とちょっとの肉になった麻里は、私の死にたいを叶えてくれませんでした。

11/28/2023, 12:52:21 PM