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 風に身を任せてみた。それは暴風だったから。それは好きなことを荒らすけれど、嫌いなものだって飛ばしてくれるから。
 足元が攫われて、体が浮いて、地面から目が離れる。感覚は荒波に揉まれているみたいなのに心は穏やかだった。きっと恐怖は押さえつけられる程弱かったんだ。そう、一人で判断を下したときには、体の周りにはいつのまにか空しかなくなっていた。
 くるりと体を反転すれば、知らない景色が目に入って。ぴんと手を伸ばせば、届かないことを思い知らされて。
 ほっとすると同時に、涙が出てきてしまったんだ。

5/15/2023, 6:45:00 AM