NoName

Open App

何も知らないのねあなた。
と、侮蔑を含んだ目をして見下ろす妻。
そりゃあ仕事しているしな。
と俺
どうやら娘が彼氏を連れてくるらしい。
どんな奴だろうか。いや娘まだ、18だぞ。
年上だろうか。なら止めなければ。
そもそも、どんなやつが好きなのだろうか。
時間が近づくたびに ドキドキハラハラする。

ガチャリと ドアノブがなる。

お父さん お母さん ただいまー。
おじゃまします。

娘と彼がきた。

目を合わせて 第一声

あ、君は。あの時の。

私は知っていたのではないか。

あの時の命の恩人。

3年前の夏の日 俺は道端に伏せ1ミリも動けないでいた。
額からは脂汗 声は出せるが呻くしかできない。

大丈夫ですか。何か飲み物と人を呼んできます。

すみません! そこのメガネをかけた 緑の服の方。
救急車。

その声が最後 意識を失った。

その一瞬だったが 額と手に特徴的な傷があったのだ。

重度の熱中症から目が覚めたときには居なくなっていた。

11/8/2024, 4:39:55 AM