ヨリ

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●願い●

海岸近くの公園に私はいた。
そこは、思い出の公園だった。

高台にあるその公園からの景色は
まるで海の上。

ずっとずっと続く海と波の音。

日はもう沈もうとしている。

私は、握りしめくしゃくしゃになった、
一通の招待状に目をやる。

それは大好きな幼馴染みから送られたもの。

突然音信不通になったと思ったら…



そっか…うん。元気そうでよかった。

「私も元気ですよー」

と、強がってぽつりつぶやいてみる。

誰一人居ない公園。
日は沈みきって、少し寒い。

どこからかカチカチッと音がして
それを合図に公園の電灯がポッと辺りを照らす。

今夜は新月だからか、電灯がよりいっそう
明るくまぶしく感じる。

目の前に広がる海は薄暗いけれど、
まばたきを一回したら、私の見ている海だけは
私の瞳を通してとてもキラキラしてみえた。

私は、昔幼馴染みとお揃いで買った
大切なネックレスを外すと
その薄暗い海の方めがけて空に投げ捨てた。

今までそれを大切に身につけてたなんて
何だか笑っちゃうでしょ。
貴方はとっくに仕舞っていたんだろうな。

電灯の光がネックレスのチェーンに反射して
まるで流れ星のようだった。

私は何だかすっきりして、
さらにくしゃくしゃになった招待状を破り、
そこらへんにあったごみ箱に捨てる。

どうか、貴方が幸せになりますように。

ネックレスを投げ捨てた時あの光に願った。
私の気持ちは暗い海に捨てた。


公園の灯りと波の音が遠くなっていく。

明日は休み、ジュエリーショップに
ひやかしにでもいこうかしら。



fin,




#今回のお題は【流れ星に願いを】でした。

4/25/2023, 11:33:25 AM