以前、TVドラマをみながら「俺はあぁなったら延命治療はしてほしくねえなぁ」と父が言っていたのを、仕事のメールを確認していた私は何となく聞いていた。
そうだ、確かに言っていた。
けれど今、突然、病院の集中治療室のベッドの上にいる父を目の前にして、私はひどく混乱と動揺に陥っていた。
散歩中の父をはねたのは、信号無視の車だったらしい。
父に生きていてほしい。
たとえこの決断が父にとっては間違いだとしても、私は父の言葉に従うことができなかった。
「何か、他にもっとできることがあるだろう!!」
医師の説明を遮って、私はその医師の胸ぐらをつかみかかりながら怒鳴った。
医師は看護師を制し、優しく私の手を握り、私の手に涙を落とした。
医師は本当に全力を尽くしてくれたのだろう。
私の嗚咽だけが病室に響いていた。
お題「たとえ間違いだったとしても」
4/22/2024, 11:30:51 PM