汚水 藻野

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蝶というのは死者を表す生き物だとかなんとか、聞いたことがある。
俺の村も、そんな蝶にまつわる伝承がある。

満月の美しい夜、食糧を目当てに村に忍び寄ってきた鬼が、金棒を振り翳す。その角で威嚇し、その体躯が俺たちに危害を加え、その武器で人間を襲う、あの鬼だ。
昔々から鬼は恐れられ続けていた。

ついに俺たちの村にもやってきてしまった。
もう何十年も昔、俺の父が子供の頃にやってきたそうだから、つまるところ祖父の時代だ。
鬼は金棒を肩に担いで、何かに対し怒り狂い、その金棒を蝶に振り翳した。
人々は当然困惑、襲われる対象は俺たちだと思っていたからだ。
だが蝶が身を呈して俺たちの村を守ってくださったのだ、と分かると、村は蝶を称えた。

ひらり、ひらり、ひらり。

独特な翅の音を立てて、その蝶は飛んだ。
あれ、あれが、あれは…。
「あ、あああ、」
吸い込まれていくように足が動く。
頭もよくはたらかない。
「ああ、綺麗だ」
「ああ…」

「鬼、霊…?」

#2024.5.11.「モンシロチョウ」
昨日に続けて創作蝶の話。

最近hrakにハマりつつある。実は夏に友達と映画見る約束してから追ってた。
なんか、観てると自分もすげえ動けそうな気分になる。分かりません?

5/10/2024, 3:24:42 PM