月園キサ

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#佐橋と鷹宮 (BL)

Side:Aoi Sahashi



…あぁ、どうしよう。
鷹宮にノープランで告白してしまったのは僕だが…あれから彼とどう接すればいいか分からない。


「…何故あの時、僕は…」


あの日から数日経った日の放課後、図書室の隅にある特等席で僕は頭を抱えていた。

鷹宮はこれからも一緒にいてくれると言っていたし、ここ数日もいつも通りだったが、もし彼が本当は僕のような男に告白されて気持ち悪いだなんて思っていたら?
…嫌だ、やっぱり想像したくもない。

僕は館内に誰もいないのをいいことに大きなため息をついた。


「佐橋~?そこで何してんの?」

「…!」


まさか鷹宮が僕を探しに来るとは思っていなかったので、僕は慌てて両手で口を塞ぎ、大きな本棚の列の間に隠れた。

どうする?どうすればいい?
数日前の告白について改めて謝るべきか?

ダメだ…怖い…。


「佐橋み〜っけ♪なぁにやってんの〜?」

「…な…何でもない。僕はいつも通り読書をしていただけで」

「こんなとこに隠れてか〜?佐橋の特等席ってあっちじゃね?」

「…それは…」


…近い。近すぎる。鷹宮との物理的距離が近づく度に、僕の心臓の鼓動も速くなっていくのを感じる。

好きだ…僕はやっぱり、鷹宮が好きなんだ。

僕は本を元の場所に戻すふりをして、さりげなく彼から視線をそらした。


「…佐橋ぃ〜、なーんでこっち見てくんないの〜…?」

「…ごめん。やっぱり、あの日すぐに謝るべきだったね」

「へっ?え、待って?急になんの話??」

「無理していつも通り接してくれなくていいよ。僕があの日、あんな流れで告白なんてしなければ…」

「ちょちょちょちょ、ストーーーップ!!一旦落ち着こう!な??」


本当のことを知るのが怖くて、傷つくのが怖くて、僕はまた1人で自己完結させようとしてしまった。

僕は小さなため息をついて、ゆっくりと鷹宮のほうへ向き直った。


「…正直に教えてほしいんだ、鷹宮。あの日…僕に告白された時、本当はどう思った?」

「え?いや〜…うん、ビックリはしたぞ!でもなぁ、なんか…へへっ」

「…?」


鷹宮は最後まで言い切る前に、じっと僕の目を見つめ、それから恥ずかしそうに笑った。

…その反応は…彼に嫌われてはいない、ということなのだろうか?

ところが、鷹宮からはまた違ったベクトルの予想外な答えが返ってきた。


「んーとさ、オレ時々彼女欲しい〜とか言ってたじゃん?」

「…確かに言っていたね」

「あれホントはそういうの匂わせる気とか全くなくってさ、なんつーか〜…わざと彼女欲しい〜って言ってみることで佐橋の反応を見てたっつーか〜…」

「…え?」


────────ドクン。

期待したら余計に傷つくだけだ。だからまだ平常心でいた方がいいと分かっている。分かっているのに…。

僕は期待に脈打つ胸の鼓動を押さえつけて、鷹宮の次の言葉を待った。


「オレたちってもともと恋愛とか興味ない者同士だったじゃんか?だからなんか、もしオレが佐橋のこと好きになった〜とか言ったら、お前が逆に混乱しそうだと思ったんだよ…」

「…え」

「でもそんな時に先にお前に告白されたもんだから、マジでビックリしたわ〜!オレだけが一方的に佐橋を好きになってたわけじゃなかったんだな〜って!」

「…待って…待ってくれ、じゃあ…」


…鷹宮も、僕を好き…だったのか?
僕は嫌われていなかった…?

安心した瞬間に目の奥がツンと痛んで、視界がふわりと曇った。


「へへへっ、なぁに泣いてんだよぉ〜!」

「…泣いてなんかない…!」

「オマエの鉄壁の無表情が崩れる瞬間がそんなに可愛いとは思わなんだ!新発見♪」

「…と、突然可愛いなんて言わないで…混乱する…」


…どうしよう、すごく幸せだ。
かつてこんなに幸せな気持ちになったことがあっただろうか?

ずっと隠し続けていた鷹宮への "好き" が溢れて止まらない。
そうか…これが恋なんだな。

胸に片手を当てて、僕は必死に自分を落ち着かせた。
両想いだったことが分かって舞い上がるなんて、僕のガラじゃない。


「すっげー可愛いと思ったから可愛いって言ったんです〜!からかってるとかじゃないで〜す!」

「からかってるわけじゃないことは分かってる、でも…突然言われるとだな…」

「お?お?佐橋、なんか耳赤くなってね??」

「頼むから、今は僕をあまりじっと見ないでほしい…」

「へっへっへ〜、やなこった!!」

「お前っ…!」


きっと叶わない恋だろうと、ずっと隠し続けていくつもりだったこの想い。
ところが奇跡が起きて、僕と鷹宮の想いが通じ合った。

…鷹宮。君と出逢ってから、僕は変わった。
もうこれ以上、気持ちを隠す必要はない。


「佐橋」

「…?」

「これからもずーっと、一緒にいような!」

「…ふふっ、当たり前だ。後でやっぱり嫌だと言っても、もうお前から離れてやらないからな」




【お題:君と出逢って】


◾︎今回のおはなしに出てきた人◾︎
・鷹宮 颯人 (たかみや はやと) 攻め 高1
・佐橋 碧生 (さはし あおい) 受け 高1

5/5/2024, 2:37:20 PM