私は飛行訓練を終えて箒の手入れをしていた。
教授に小言を言われるのは何度目だろうか?
……まあ気にしてもしょうがない。教授にいくら言われたところで、私にはこの飛び方しかできないのだ。
「オーギュ、うちのチームに入りなよ。」
階段から降りてきたイゾルトが唐突に話しかけてきた。
「教授はあんなふうに言うけど、普通と飛び方が違うのは強みだと思うよ。
みんな普通の飛び方の人しか相手してないんだからさ。
オーギュならすぐにエースになれるよ。」
私は少し考えてから答えた。
「……私は争いごとは好きじゃないから。」
イゾルトは少し呆れたような顔をして言った。
「争いったってスポーツだよ。ゲームだよ。
あんなふうに鳥みたいに飛べるのは君以外に見たことない。
それって才能だよ?
使わないのはもったいないと思うな。」
「……まあ、気が変わったらいつでも言って。」
そう言ってイゾルトが去っていったところに、魔法史の授業を終えたサーシャが入れ違いにやってきた。
「オーギュ、イゾルトは何て?」
私はサーシャにイゾルトが言ってきたことを説明した。
「たぶんイゾルトはただ強いチームメイトが欲しいんだよ。
でも、オーギュはそんなことしなくていい。
さ、今日の授業はもう終わったし、行こっか。」
サーシャは箒に跨ると、後ろに乗るように箒をとんとんと叩いた。
空中をそよ風のように優雅に飛びながら、サーシャは楽しそうに笑って言った。
「それにしてもイゾルトは鋭いよね、私達は〝鳥〟だもんね。」
(フリートフェザーストーリー いつかのできごと篇 #1 : お題「鳥のように」)
8/21/2024, 8:40:27 PM